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andymori『宇宙の果てはこの目の前に』雑談3/3(初出:2013年10月11日)

 


 

くい つまり、アンディモリのまったく違った面が見えたアルバムになったっていうことね。


『宇宙の果てはこの目の前に』andymori

田中 たとえば“16”っていう曲があるじゃないですか。あれは歌詞の中に

どこにも行けない彼女たち
駅の改札を出たり入ったり

16のリズムで空を行く
可愛くなれない性格で

なんて言葉があって、一見、行き場のない女の子たちのことを歌ってるかのようですけど、実際は小山田さん自身の歌なんですね。本人がインタビューでそうぼやいていました。『十代の女の子に向けた歌』という体裁を取らないと、自分自身についての歌を発表できないんですよ。
それとか“ピース”っていう曲なんて、陽性のコードを持つ曲調でもって、

姉さん 会いたいよ いつでも思ってるよ

なんて、お姉さんへの想いを歌っています。小山田さんもブログで書いたりしていますけど、お姉さんである咲子さんは事故で亡くなっています。そのことを踏まえて“ピース”の歌詞を読むと、悲しみと後悔についての痛ましい歌なのがわかります。でも、曲や演奏はあんなに明るい。アンディモリの楽曲ってそういうことが多いじゃないですか。歌詞だけを読んだときと、曲に乗った時に感じる印象が全然違う。なんでそんな作風になっているのかというと、おそらく小山田さんが、感情のままに音楽も言葉も統一してしまうことを避けたからだと思うんです。というのも、音楽でも映画でも文学でも、文化的な作品が好きな人っていうのは、本音やメッセージをそのまま口で伝えるっていうことをしたがらないというか。それは創作をするうえでは、表現の技術が稚拙だということじゃないですか。

くい うんうん。

田中 口でそのまま言えちゃう、それで満足出来ちゃうことなんて芸術に昇華する必要が無いからですよね。だから、「僕はこう思ってますよ。みんな聴いてください」という、具体的なメッセージになることを避けたのではないかと。僕は「これ正論ですよね」ってどや顔をする人間が好きじゃないです。極端な言い方をすると、正論が言いたいんなら、学者でも文化人にでもなれよって僕は思ってしまうんですよ。知識が無いのに正論言ったつもりになるなよ、って思うんですね。

くい そういうことね。この作品のどこが好きなのかよくわかりました。飛び降りた話に戻るんだけどさ、死ななかったよね。死ななかったってことは、死なないようにしたってことだよね?あえて少しスピリチュアルな言い方をすると死にたくない、って願ったから死ななかったっていう話だと思うんだよね。事故だとか自殺だとかそういう次元の話じゃなくてさ。

田中 そうですよね。死ぬために飛び降りたなら、確実に死ぬだろうっていう場所から飛んだはずですもんね。小山田さんは、作品から見るに、100%の確信をもって行動をするタイプの人ではないじゃないですか。死ぬって言ったって、希望が何もないから死のうっていう感じではないと思うんですよ。だから、迷っていたんじゃないですかね。希望が無いとかではなくって。

くい 何が言いたいかっていうと、「終わらせたくなかったんだ」って思ったんだよね。やっぱり、死ねないじゃん。俺はいくら絶望してる人を見ても結局死んでないじゃん、って思うのよ。だからこそ、死ににいってる人を見ると、うわぁーって思うわけじゃん。太宰治ううぅぅぅ、みたいなさ(笑)。

田中 そうですよね。

くい だから俺は、ちゃんと復活して「やっぱり辞めない」って言ってほしいな。それでさらにいい作品を作ってくれたら最高だよね。だって、そうじゃないと、このワンクッション意味ないじゃん。なにこの留保期間、って思う。という、自分なりの復活後にどうなって欲しいか論なんですけど、元くん的にはどう?

田中 今僕自身が、アンディモリにどうなって欲しいかって考えると、病んだ精神を持った人だという事が明らかになってしまったのだから、抱えているものをもっと音楽に叩き付けてほしいですかね。それは、『光』に入っている曲みたいに、日記を書くようなラフな感覚で曲に落とし込むって形でもいいんです。

一度聴いただけじゃ読み解けないような難しい歌詞になっていてもいいです。ただ、小山田さんの中に湧いてる感情をあまり隠さないで吐き出してほしいです。今の時点でもう事件から五ヶ月が経っていて、次に曲を作るのはいつになるのかわからないですけど、これを無かったように振舞うことはしないで欲しいです。表現の方向を予測するとなると、ヒッピーっぽい、愛万歳とか、人生最高みたいなアルバムになるかもって気がします。

ただそっちで行くと、既に『光』でやってしまっているよな、っていう……。それに、自分が生きるか死ぬかっていう問題って、311と比較すると小さな問題になってしまうので、そこもまたツライところですよね……。逆に、答えが出せない問題に苦悶する姿っていう方向に行くとしたら、“teen’s”以上のものを出せるかというと、難しいと思うんですよ。

あれはあれで禁じ手的な曲というか、本当なら一つ一つのラインが、一つの曲になるくらい大きな問題じゃないですか。で、それらを、答えが出ないままに叫んでしまうっていう、他のアーティストがあまりやらない方法を取っている。

前回も書きましたけど、創作表現って言うのは物事を純化して、答えを提示できるようにすることがほとんどですから。アメリカのブライトアイズとか、日本でもアロウズがやっていますけど。でも、本当に一番聴いてみたいのは、ファンに唾を吐きかけるような、怒りに満ちたアルバムですかね。

「俺を追い詰めてんのは、お前らなんだよ」みたいな。これは今まで、自分が聴いたことのないような凄まじいモノになりそうな気はします。だから僕として、僕を含む、アンディモリファンを蹴散らすようなものを作ってくれたら嬉しいですけど。

くい いいアルバムが出たから、また次が楽しみになったっていうことだよね。『革命』と『光』のときは次の作品を待ち望む気持ちにはならなかったもん。

田中 ほんとにそうです。やっぱりこのアルバムのどこが別格かって、前の二枚で「アンディモリもここまでか……。って思っていたのに、これだけの物が出たっていうところがあるので。ダメ期を乗り越えてくれたっていう感覚です。シロップ16gは結局スランプを乗り越えてくれなかったので(笑)。

andymoriベストソング

田中元
01.SAWASDEECLAP YOUR HANDS
02.teen’s
03.1984
04.FOLLOW ME
05.CITY LIGHTS
06.モンゴロイドブルース
07.光
08.life is party
09.everything is my guitar
10.16

くいしん
01.FOLLOW ME
02.1984
03.青い空
04.オレンジトレイン
05.すごい速さ
06.Sunrise & Sunset
07.16
08.CITY LIGHTS
09.クラブナイト
10.everything is my guitar


『宇宙の果てはこの目の前に』andymori