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「I have not driver lisence」by miporu(4/4)初出:2011年

 


 

アーミッシュ。彼らはアメリカのペンシルベニアやカナダの一部に住むドイツ系の宗教集団である。

彼らについて詳しくは、『アーミッシュの人々』など、書籍も出ているので興味のある方はそちらを読んでいただきたい。ここでまず簡単に説明すると彼らは移民当時の生活様式のまま、今なお暮らし続けている団体である。電気、ガスはほとんどまったく使わない。もちろん電話もテレビもない。基本的に自給自足。異様なまでにストイックにその信念を貫いている。私は初めて彼らのことを知った時から、その魅力に取りつかれているのだ。

まずは彼らの服装である。麻や絹で作られた至ってシンプルで質素な服は、まるで昔の絵本や映画から抜け出てきたようで心躍る。その格好で馬車に乗り移動するのだからたまらない。彼らの住む地域では当たり前のように自動車の隣に馬車が並んで走っている光景を目にすることができる。

また、医療においても電機は使わないので、虫歯もそのまま抜いていた。

私は彼らの衣食住全てに興味があるのだが、特に興味深いのが、「ラムスプリンガ」と呼ばれる期間だ。この期間、彼らは16歳から成人になるまで「外の世界」で過ごす。そこではアーミッシュにおける全ての禁欲から解放される、夢のような時間だ。これについては『Devil’s Playground』と言うドキュメンタリー映画にもなっているのだが、タイトル通り、まさに「悪魔の遊園地」。今まで抑圧されてきた欲望が、ここぞとばかりに爆発する。質素な伝統衣装を纏ったまま、酒を飲み、時にはドラッグに手を出し、踊り狂い、暴れまわる様は私にものすごい衝撃を与えた。日本と比べて、アメリカのティーンは遊びが派手だが、アーミッシュの遊び方は特に半端じゃない。限られた期間を思い残すことなく遊びつくすように、暴れ、感情を発散させている。

実はこの「外の世界」からアーミッシュに戻るか否かは本人に委ねられている。しかし、もし戻らないと決めたら、もう二度とアーミッシュである家族に会うことは許されない。そして、戻れば今まで「外の世界」で行ってきた悪行を懺悔することが出来、天国に行けるとされている。もともと信仰心の強い教育を受けてきた彼らは、どんなに悪いことに手を染めても、心の奥底にある信仰心を忘れてはいない。ラムスプリンガによって、様々な悪行に手を染めてきた青年が「外での生活がどんなに楽しく、心地良くてもここに残ったら、死後天国へはいけない。」と寂しそうな顔で呟いていたのがとても印象的だ。だからどんな快楽を知っても彼らの大半はアーミッシュに戻っていくそうだ。

時に私は、恵まれすぎている今の環境がとても恐ろしくなることがある。バスや電車は10分も開けずに到着し、ボタン1つで顔を見て恋人と話すことができる。あらゆる商品が選びきれないほどの品揃えで、紙とペンがなくても文章や絵を書くことが出来、カメラで撮らなくても写真が作れる時代だ。それに慣れてしまい、我慢することと待つことがどんどん出来ない人間になっていくような気がしている。

「だったらアーミッシュのような生活をしろ」と言われて出来るわけではないが、昔ながらの風習を大事にすること、時間をかけて物事を行うことを楽しめる余裕、そういうものは忘れたくない。それは、私が「人の気配」に惹かれるからである。新しいモノは綺麗で斬新で便利だが、そこからはあまり人の温もりを感じることはできない。そこで必要なのが、「時間」である。作られたものに、温もりと気配を与えられるのは長い時間しかない。時間に余裕を持って、しっかりとそのモノを見つめなければ、本質を見ることはできない。

しかし、否応なく流れていく時間の中で、その流れにどうしても逆らえない時、彼らの暮らしを見ることで、私はその大事な部分を思い出すことができる。だから私は忙しい時こそ、ふとした時に彼らのことを思うのだ。

そんな彼らは、「カメラには魂を抜かれる」との思想により、写真が好きではないそうだ。

しかし、私の心の底にある、撮りたい景色がそこにある。生きているうちに一枚だけでも彼らの写真が撮れたら幸せだな、と私はコッソリ夢見ている。

そんな私がハワイで出会った写真の彼。彼はせっかくハワイに来ているのに、昼間は寝ていることが多く、たまに起きていても本ばかり読んでいた。「たまに泳ぐとすぐに溺れるよ。」と穏やかな表情でまた目を本に戻した。植物が好きで、小説や詩を書くのが好きだった。しかし、彼の友人は「昼間はハンモックで横になり穏やかな表情で本を読む「天使」のようだ。しかしお酒を飲むと少し荒れて、「悪魔」の部分が出る。」彼のことをそう言っていた。

彼の出身がペンシルベニアだと聞いて、私は彼が実はアーミッシュなのではないかと今でも少し疑っている。私はいつまでも、そんな想像で頭をいっぱいにする「時間」を楽しめる人間でいたいのだ。

テキスト:miporu