andymoriの“FOLLOW ME”と「ララララ」
WRITER
くいしん twitter.com/Quishin
アンディモリ4thアルバム『光』雑談第三回。
各記事へはこちらから。
(1)andymoriには、一貫したメッセージ性がない
(2)andymori『光』は一つの方向に向けてつくられてる
(3)andymoriの“FOLLOW ME”と「ララララ」
(4)小山田壮平は「言葉」じゃなくて「歌」の人
アンディモリ4thアルバム『光』雑談
(※2012年9月収録)
田中
アンディモリが、アウトサイダー側に寄り添うような作品を作ったということが、僕にとっては嬉しいことで。あと、寂しさというか、興奮が冷めてしまった理由はまだあります。“サワズディークラップ・ユア・ハンズ”と、“クラブナイト”はアレンジがすごく似ているじゃないですか。“ウェポンズ・オブ・マス・ディストラクション”も、“オレンジトレイン”と“グロリアス軽トラ”を足して二で割ったようなものだし。歌詞に関して言えば、楽曲をまたいで同じ言葉を用いるってやりかたは功を奏していますけど、演奏でそれをやるっていうのはどうかと思うんですよ。ラモーンズじゃないんだから……いや、ラモーンズ、好きですけどね。しかも、先に出した楽曲のほうが断然いいから、セルフ二匹目のどじょう状態になってるんです。クラブナイトのコーラスが、棒読みの「ラーラーラー」なのも嫌なんです。メロディセンスが衰えたなって思わされちゃう。“フォロー・ミー”のコーラスとか、そこ聴いただけで、ガツンと持ってかれちゃったじゃないですか。
くい
たしかに。あれを初めて聴いた瞬間に芽生えた感情って、なんだろ、そんなに人生で何度も味わえるもんじゃないと思う。1stアルバムの1曲目があれだもんなあ。凄いわ。しかもタイトルが“FOLLOW ME”だもんね。時代そのものだよ。<そして僕の部屋においでよ>でラララだから、ある意味、氣志團とあんまり変わんないからね。
田中
どんな言葉よりも雄弁な「ラララララ」があって、そこが、ほんとにアンディモリに惹かれた理由なんです。あと、クラブナイトについては、もうひとつ言いたいことがあって。この曲は、タイトル通り、言っちゃえばアガる曲じゃないですか。それに比べて“サワズディークラップ・ユア・ハンズ”は不穏というか、なんでしょう、人の心を不安にさせるような言葉が敷き詰められてるじゃないですか。“辛いかい 足をひきずって歩くことは 醜い顔を隠すことは 何も言えないでうつむくことは”なんて、強烈すぎるでしょう。この、三段階で、ひとことごとに、現代人にシンクロさせていく感じ。足を引きずって歩く辛さを知っている人はなかなか居なくても、自分の容姿を他人に見られたくないと思ったことがある人は、わりといると思うんですよ。で、最後には、多くの人が体験したことがあるであろうシチュエーションを持ってくる。この曲における「何も言えない」っていうのは、自分と相手が同じ言葉を話せないという状態なのかもしれませんけど。で、物語自体は、SF的に考えると、日本人であるというだけで迫害されるようになった世界観っていう捉え方ができると思っていて。
くい
SF的って何?
田中
近未来的とか、今より先の時代を舞台にしているのに、リアリティを感じさせたり、現在の状況を強く反映しているとこですかね。
くい
まさに『1984』ってことか。
田中
そうなんですよ。あの曲、ジョージ・オーウェルの有名な小説と同じタイトルなんですよね。それって多分偶然じゃないと思うんですけど。で、さっき挙げたラインもそうですけど、現代の日本が舞台ではないのに、僕らが共感しやすいような言葉をさりげなく潜ませているとのが、すごいと思うんです。でも、そういった言葉や物語も、この曲に乗ると、どう捉えていいのわからないような感じにさせられません? その、混沌とした状態とか、名前の付けられない感情って、なかなか巡り合えるものじゃないと思うんです。
で、“クラブナイト”は、曲はいいんですけど、歌詞も内容もアゲじゃないですか。すごく一元的というか、一義的な捉え方しかできない音楽にしちゃってるじゃないですか。光っていうテーマならそれでもいいのかもしれないですけど、アンディモリは今まではもっといろんなものを含んだ音楽を作ってましたよね。
くい
んー、まあ、アルバム全体通してっていう意味もあるの?
田中
そうですね。最初に言った、メッセージの一貫性のなさっていうのは、全編通して気付いたことではあるので。
くい
でも“クラブナイト”だからそれは許されることなんじゃない。許されるっていう言い方もおかしいけどさ。クラブって、クラブ文化を知らない人は、ただの“アゲ”の文化だと思ってるわけじゃん。でも本当はクラブっていうカルチャーは、クラウドっていうくらいで、“サゲ”ありきのものじゃん。ただ、『光』って、特別なテーマをもって作られたわけだよね。震災後の日本の状況、2012年の人々の心情があるからこういうアルバムができたわけだよね。テーマは、まさに光なんだろうけど。ただ、闇の中の光を求めてたのに、こんなに全面に光を押し出されても、って思う人は多いかもね。もちろん、それだけ今の日本の現状が暗いっていうことなんだろうけど。
田中
やっぱり、アンディモリのことを考えるとなると、その辺りは外して考えられないですよね……。
>>>次回へ続く
andymori作品の星取り表
『アンディとロックとベンガルトラとウィスキー』
Quishin★★★★☆
田中元★★★☆☆
『andymori』
Quishin★★★★★
田中元★★★★★